根底にあるのは、慈愛と利他
ゴータマシッタルーダは、王子様として生まれ、なんの不自由も無い生活をしていました。しかし、お城から外へ出ると、老人・病人・死者という、苦しみが渦巻く状態を見ました。「なぜ、この世では、人々は苦しまなければならないのか?」
この根源的な問題の理解に悩み、ゴータマシッタルーダは、29才で城を出て、苦しみとはいったい何なのか?を追求しはじめます。まずは、たいへんな苦行を行い、自らを苦しめて「苦しみ」の原因を探ろうとしました。しかし、苦行しても何も解決しないことがわかり、苦行をやめて、静かに洞察をはじめました。
我々の住む世界は、いったいどのような世界なのか?
洞察によって、ゴータマシッタルーダは、この世界は「諸法」が支配しており、その諸法のひとつは「無常」であると気づきました。悟りを開いた瞬間です。このときから、ゴータマシッタルーダは釈尊(しゃくそん)、お釈迦さまと呼ばれるようになります。
「無常」とは、「常で無い」と読みます。この世にあるものは、動物も植物も物質も、すべてが無常であるという真理です。この世界に存在するものは、常に変化していくのだという真理です。同じ状態のまま存在するものは、なにひとつ無いということです。
この「無常」という真理の意味を深く理解できれば、穏やかな心を得ることができます。お釈迦様が理想とし、追求した心の状態は、「なんの心配も無く、不安や不満も無く、穏やかで、すっきりした心の状態」で、この状態を阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)」と言います(般若心経)。
この世界に存在する、すべてのものは無常、常に変化しており、変化しないものは、ひとつも無い。これがこの世界を支配している法則であり、これを人間の力で変えることはできない。当たり前のことのようですが、この真理に帰依(きえ:深く理解すること)できれば、あなたが日頃、不安だったり、困ったり、不満に思っていることも、この世界の法則であるから、不安だったり、困ったり、不満に思ったりすることも無くなるのです。これは、世界を支配する法則なので、逆らうことはできません。
そして、あなたが阿耨多羅三藐三菩提の状態を得るには、「無常」に帰依することに加えて、様々なものに「愛情を」向けること、様々なものに「感謝」の気持ちを持つことなのです。これが「慈愛と利他」の精神です。実際に実践してみましょう。1週間で、あなたの心の中に「阿耨多羅三藐三菩提」が生まれますよ。
(記 普陀山妙法寺 正禅住職)