住職のなんでも相談室やマインドフルネス講座をやっていて気づいたこと。それは、いつも、何かに「感謝」している人には、鬱病を見たことが無いという事実です。
いつも何かに感謝するためには、知識や経験、そしてちょっとした洞察力が必要。なぜならば、日常のいろいろな場面で、多くの感謝する対象に気づく、見つけるためには、知識、教養、経験による情報量と、その情報を元に、その奥にある真実、状態までを想像(洞察)することがポイントだからです。このような日常の中でのたくさんの気づきを実践している人たちは、いつも何かに感謝している状態となります。
「感謝」する事象にたくさん気がつくというのが、心(脳)にたいへん良い効果をもたらします。住職はヨガも教えていますが、ヨガで体をストレッチすることで、筋肉の凝りがほぐれ、体全体が軽くなります。いっぽう、心(脳や心臓)はどうやってほぐすのか?これが結果的に「感謝の念」なのです。
マインドフルネスの実践は、今、目の前のことに意識を集中させ、観察することから始まります。観察した結果は元情報となります。次に得られた情報から、瞑想によって、その奥にある事象までを想像(洞察)していくと、いろいろな事実が見えてきます。そして、その中の多くの事実が、自分を支えている、自分を生かしてくれていることに気づきます。例えば、自分の身近な隣人である両親、家族、友人。また飼っているペット、周囲の生き物。空気、水、太陽、地球、宇宙などの環境も同様。さらには人類が構築した社会インフラ(上下水道・電気通信・ガス・交通機関)、商店、そして国家、行政機関。またそこで働いているたくさんの人たちも。書き始めるときりがありません。
そして、あら不思議。「感謝の念」を心(脳)にたくさん与えると、心(脳)は、穏やかに安定しはじめ、顔もにっこり。穏やかな心(脳)は、さらに安定した心(脳)を育成し、新たな気づきを発見していく。さらに進むと、今まで見えなかったものが見えるようになってくる。住職は、このことを「魂の次元が上がる」と表現しています。神仏の世界に近づくという感覚でしょうか。
コンビニの店員さんに、不手際があったからと土下座させるなんて、とんでもない。深夜まで働いてくれる店員さんがいるから、深夜に買い物ができるわけ。コロナウィルスの感染を恐れて、宅配業者に「近寄るな」などの暴言を吐くのも、とんでもない。宅配業者がいないと困るでしょう。訪問看護の医師の対応が気に食わないと散弾銃で撃ち殺すなんて、とんでもない。訪問看護でどれだけの人が助かっていることか。
「感謝の念」は、ストレスを減らす心(脳)の栄養素。真の仏教徒やキリスト教の信者が、いつも笑顔でにこにこしているのは、いつも、何かに感謝しているから。そして、彼らの中には、鬱病は皆無といっていいでしょう。いつも「ありがとう、ありがとう」と言っているお爺さんやお婆さんたちは、長年の経験から魂の次元が高くなっており、神仏の世界に近づいているのかも。
(記 普陀山妙法寺 正禅住職)